「21世紀型スキル」を実践する大会
今回世界大会の開催国であるオーストラリアは、「21世紀型スキル」の普及と教育改革を推進するための国際組織である ATC21S (ASSESSMENT & TEACHING OF 21st CENTURY SKILLS) の中心国である。メルボルン大学が中心となり、産業界(シスコ、インテル、マイクロソフト)や国際機関(ユネスコなど)と連携して、21世紀の国際社会で必要となる批判的思考力、問題解決能力、コミュニケーション能力、ICT活用能力などを「21世紀型スキル」と規定している。イマジンカップは、まさに「21世紀型スキル」の実践を求められる大会であり、その意味で、オーストラリアは、記念すべき10年目のイマジンカップ世界大会を開催するに相応しい国でした。

「フラットな世界」を実感できる大会
日本にいると、フリードマンの言う「フラット化する世界」を実感するのは難しいと���います。イマジンカップは、まさに世界がフラットであることを実感させてくれる大会です。100カ国を超える参加国の学生に、同じようにチャンスがあります。優れたアイデア、情熱、ソリューションを完成させる粘り強さがあれば、後進国の学生が、先進国の学生に勝つ可能性があります。事実、今大会では、ソフトウエアデザイン部門の第1ラウンド通過20カ国に、アフリカのウガンダが残り、先進国のアメリカやイギリスが残れませんでした。PCやスマートフォンなどのデバイス、インターネットの普及は、世界中の学生にチャンスを与えています。(もちろん国によってインフラ整備の格差は、まだまだ大きいですが)。 昨年であれば、Kinect、今年は、Windows 8 など、まだ正式リリース前の注目の製品やテクノロジーに対する感度の高さも、先進国と後進国に差はありません。今大会、Windows 8 対応のソリューションを持ち込んできた国は20カ国以上。 アルジェリア、アルゼンチン、ブラジル、クロアチア、フランス、グルジア、ドイツ、インド、アイルランド、韓国、クエート、レバノン、マレーシア、メキシコ、モロッコ、ポルトガル、カタール、セネガル、セルビア、シンガポール、タイ、チェニジア、ウクライナ・・・まさに、フラットな世界です。

「アントレプレナーシップ(新しい企業の創造意欲、高いリスクに果敢に挑む姿勢)」が今後の最重要キーワード
前回のアメリカ(ニューヨーク)大会から、参加学生へのメッセージとして、「アントレプレナーシップ(新しい企業の創造意欲、高いリスクに果敢に挑む姿勢)」が強く掲げられはじめました。 ニューヨークでは、開会式に、Foursquare の CEO の Dennis Crowley が登場したり、閉会式でマイクロソフトから総額3億円規模の学生への起業支援プログラムが発表されました。今大会では、過去のイマジンカップ出場者から、実際に起業した学生(卒業生)をゲストに迎えて、イマジンカップを通過点として、起業に至るストーリーが紹介されました。閉会式では、アントレプレナーシップを鼓舞する著名人からのビデオメッセージも放映されました。日本でもお馴染みのスタンフォード大の Tina Seelig や、著名なベンチャーキャピタリスト( Vinod Khosla や Ron Conway など多数)がビデオに登場して、起業マインドの重要性、可能性を訴えていました。
”Whatever path you choose, don't lose that entrepreneurial spark.” 
ビル・ゲイツ、スティーブ・ジョブス、マーク・ザッカーバーグに続くのは、君たちである。人種、国籍、宗教、性別に関係なく、優れたアイデアを持ち、ソリューションを創りだせる才能に対しては、今後も惜しみなく投資が行われていくでしょう。

「日本が抱える課題の大きさ」
これまでの "Japan Nothing" (日本の存在感ゼロ) を覆して、今回、日本代表チームが過去最高成績を達成したことは、本当に素晴らしいことでした。しかし、過去4年間を通じて、担当者として感じたのは、日本が抱える課題は非常に大きいということです。実際、この大会に参加する日本の学生と他国の学生を比較した場合、日本の学生には、幼さ(ひ弱さ)を感じざるえません。参加している日本の学生さんは、そう思ってないかもしれませんが、日本は、参加学生に対して、最も手厚いサポートを実施している国です。世界大会に同行する大人の数は参加国中最大規模、大会に関わる主な情報を翻訳して提供している国も日本ぐらいです。(過去には、ほとんどのドキュメントを翻訳提供していた時期もありましたが、ここ数年は、それをやめました。) それだけのことを実施できる経済的な余力が、まだ日本にあるという証ではあるのですが、結果として、日本の学生の自立心を大きくスポイルしてしまっているのは事実です。参加国のほとんどは、英語圏ではありませんが、どの国の参加学生も、ルールやスケジュールは、自分たちで確認し、不明点があれば、自力で問い合わせ、解決していきます。他国の学生と比較した場合、日本の学生は、メンターの先生をはじめとする周りの大人への依存度が、残念ながら、非常に高い。 活用(利用)できる大人がそこにいるからということになりますが、豊かであることが、実はハンデとなっているかもしれないと感じた4年間でした。「21世紀型スキル」や「アントレプレナーシップ(新しい企業の創造意欲、高いリスクに果敢に挑む姿勢)」が、容易には育まれない環境を、周囲の大人たちが実は作りだしてしまっているのではないでしょうか。自戒をこめて、記しておきます。

最後に辛口な感想となってしまいましたが、それでも、イマジンカップは、学生のみなさんが、チャレンジするに値する素晴らしい大会です。頂き(イマジンカップ)は、日本の学生には、まだ未踏のままです。日本の学生さんが、イマジンカップを、私が愛する日本に持ち帰ってきてくれることを期待しています!

日本マイクロソフト 渡辺弘之