最近、複数の Web 制作会社さんにお邪魔する機会がありまして、そのたびに 「HTML5 でのお仕事って、けっこうありますか?」 と質問するのですが、いただく回答としては「スマートフォン用のものが 1~2 本くらいですかね」というのがほとんどです。

まぁ、HTML5 対応の Web ブラウザーの普及率と、古いブラウザーのサポートを考えるとしょうがないのかな、という気もします。

では、HTML5 を本格的に使うには、まだ時期が早いのか? というと、けっしてそんなことはないと思います。

「そうはいっても HTML5 でできることは今でも JavaScript + Flash でもできるし、それに、HTML5 をサポートしない古い Web ブラウザーにも対応させるための余計な工数がかかる」と考える人も多いでしょう。

しかし、そこでいうところの工数は単なる「コスト」 (出費) ではなく、のちのち回収可能な「投資」と考えていただきたいところです。

なぜならは、古いブラウザーはこれから消えていくばかりですので、それにかかる対応の費用や工数は、単なるコストにすぎません。しかし、HTML5 は将来的な可能性を広げてくれるものだからです。

ではそういった投資をしてまで Web コンテンツを HTML5 で記述するメリットとはなんでしょう?

 

HTML5 でコンテンツを書くメリット

HTML5 のメリットは、「セマンティック Web で、検索エンジンとの親和性が高く SEO に優れる」とか、「『仕様による実装』のため Web ブラウザー間の互換性が高い」とか、「プラグインをインストールすることなくリッチな Web アプリケーションが作成できる」等々、さまざまなメリットが、さまざまなところで述べられていますが、一番のメリットはなにかというと、あたりまえのことなのですが 「最新バージョンの HTML」 であるということでしょう。

HTML5 を使用すれば、それ以前であれば Flash などのプラグインの力を借りなければ実現することができなかったさまざまな機能を W3C の WWW に関する勧告、いわゆる「Web 標準」に則って実装することができます。

ご存じのとおり、「Web 標準」は、メーカーやプラットフォームの枠を超え、準拠されるものですので、HTML5 によって行われる機能実装は、ある意味、あらゆるプラットフォーム上の、全ての Web ブラウザー(※HTML5 をサポートしている) において、将来にわたり動作が保障されていると言っても過言ではないのです。

「そうは言っても HTML5 はまだ正式勧告に至っていないし、HTML5 をサポートしている Web ブラウザーの普及もまだまだ」という声もあるでしょう。

たしかに HTML5 の正式勧告はまだもう少し先ではありますが、それでも、今年 (2011) の 5 月には HTML5 の最終草案がアナウンスされており、各ブラウザーベンダーも草案内容に沿って機能の実装を行っています。

そして当然のことながら、今後リリースされる Web ブラウザーは、よほどの理由がない限りは HTML5 をサポートしていますし、Web ブラウザベンダーは、さまざまな方法で日々クライアントの Web ブラウザーを最新のものにアップデートしています。

たとえば弊社であれば Windows アップデートを使用して Internet Explorer  のバージョンアップを行っていますし、Mozilla さんでは Firefox の起動時に更新が見つかると自動的にファイルをダウンロードしてアップデートしてくれるようにしています。google さんでは、よくわからない方法で Chrome をいつの間にか最新のバージョンのものにアップデートしてくれています。

こうした状況もあり、二世代以上前の Windows  + オールド IE を激しくご愛顧される方々や、モトローラや IBM のチップの載った Old Mac をこよなく愛する奇特な方々以外の環境では、HTML5 が動作する環境がすでに整っていると考えられます。

そういった状況を鑑みても、今から HTML5 を使用してコンテンツを書くということは、実用という面を考慮したとしても、とくに時期尚早ということもないと思うのです。

また当然の事実として、時間の経過とともに HTML5 をサポートする Web ブラウザーの数は増えていき、いずれは HTML5 が動作しない Web ブラウザーを使用しているほうが珍しいという時代になるのです。

さらに、将来的なことを言えば、HTML5 が普及するにしたがい、Web ブラウザーや検索エンジン、開発ツールといった、さまざまな Web を取り巻く環境も、セマンティックな HTML5 タグを活用して動作するように変わっていくでしょう。

セマンティックを意識して書かれた HTML5 コンテンツはマシンリーダブルであり、Web ページの意味を扱うことが可能であるため、検索はもちろんのこと、統計や集計、分析、データ交換などに大きな効果をもたらします。

そういった、将来の セマンティック Web に対する投資の意味も含めて、今から HTML5 でコンテンツを記述することはそれなりに価値のあることだと思っております。

 

機能実装の方向性について

旧来の HTML4 から HTML5 への転換期に差し掛かろうという現在、Web コンテンツへの機能実装を、最新の Web 標準に準拠したWeb ブラウザー、いわゆるモダンブラウザーよりにするのか、古いレガシーブラウザーよりにするのかと悩むこともあるかと思います。

ちなみに機能実装のスタイルとして、レガシーブラウザーを含む、すべてのブラウザーに対し最低限動作する機能を実装し、より高水準のモダンブラウザーには、よりリッチな機能を提供するような実装を 「Progressive Enhancement (プログレッシブ エンハンスメント)」 というそうです。

逆に、実装する機能をモダンブラウザーを基本水準とし、古いレガシーブラウザーに対しても、同等ではないものの、Polyfill (ポリフィル) を使うなどして、類似の機能を提供するような実装を 「Graceful Degradation(グレイスフル デグラデーション)」というそうです。

HTML5 の仕様もきちんと定まっておらず、モダンブラウザー自体の動作もまちまちであった少し前は、Progressive Enhancement での実装が多かったようですが、HTML5 の仕様がほぼ固まり、各モダンブラウザーの HTML5 に対する機能実装も足並みがそろってきた最近では Graceful Degradation での実装の方法が増えてきているようです。

ただ Graceful Degradation が増えている理由については、前回のブログ記事で紹介しているような、Polyfill 用のさまざまなライブラリが出てきたことも背景にあると思います。

いずれにしても、「誰に対して」「なにを提供するのか」を考えればおのずと方向は決まってくると思いますので、HTML5 でWeb コンテンツを記述する際には目的と用途を明確にしていただければと思います。

 

まとめ

ということで、今回のお題「HTML5 で Web コンテンツを書くのはまだ時期尚早なのか?」 なのですが、私の個人の意見としては「投資として考えれば、今から HTML5 でコンテンツを書くことは全然早くない」 といったところです。

ただしいずれにしろ、そう遠くない未来には HTML5 を使用することが当たり前になっているはずですので、今からしっかりと勉強して使いこなせるようにしておきたいところです。

 

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